「最速でFIRE」の話

2021/11/27 14:00

「FIRE 最速で経済的自立を実現する方法」
元オリエンタルラジオの中田敦彦のYouTube大学に「FIRE 最速で経済的自立を実現する方法」という動画があります。
既にリタイアしている私が、今さら、見てどうする、ということもないのですが、タイトルが気になってしまい、視聴しました。

内容は、グラント・サバティエ氏（1984年生まれ）の「FIRE 最速で経済的自立を実現する方法」という書籍の要約です。
グラント・サバティエ氏が、5年で125万ドルの資産を築いて、30歳でFIREした実体験をもとに執筆された書籍です。

概要
中田のあっちゃんによる
FIREまでの5つのレベル、
FIREを達成するための5つのステップ
についての解説です。

FIREを達成するまでの5レベル
１，一息の余裕
２，安定（生活費6か月分の貯蓄があり、借金なし）
３，柔軟（生活費2年分の投資）
４，経済的自立（投資収益のみで暮らす）
５，有り余る富み

FIREを達成するための5ステップ
１，目標金額設定（年間支出の25年分）
２，資産把握（出来れば毎日、少なくても週１回）
３，支出削減（細かい節約より、大きなカット）
４，収入アップ（雇用、副業、起業、投資）
５，投資（取り崩しの先延ばし、アセットアロケーション、インデックス投資など）

感想
YouTube大学の特徴なのですが、入念に準備されたシナリオに基づき、中田のあっちゃんが、独特のリズムで、テンポ良く、畳み掛けるように説明していきます。
このテンポの良い説明を聞いていると、さすが、元人気芸人と感じさせますし、おそらく、予備校講師や実演販売などをやっても人気者になっただろうな、と思わせます。
内容そのものよりも、彼個人の説明するための話術（視聴者の興味をひきつける、視聴者を飽きさせない工夫、多くの人にわかりやすい平易な説明）に感心してしまいます。

ただ、一方の内容に関しては、あくまでも一つのFIRE事例として、参考にする程度がいいように思います。

キーワード、キーセンテンス
講義の中でのFIREに対する考えですが、下記にキーワード、キーセンテンスになることを挙げます。

・Retire EarlyよりFinancial Independenceが重要
・時間は有限だが、お金は無限に稼げる可能性がある
・人生で死ぬ間際に後悔すること（こんなに働きすぎる必要はなかった、自分のやりたいことをやれば良かった）
・トリニティスタディ（投資額の4％で生活すればインフレを加味しても資産は減少しない）
・福利の力があるので、若い頃から投資を始めたほうが有利
・出来るだけ早く投資して、出来るだけ早くリタイアをしよう

FIREを目指している人の中には、全て同意する人もいるかもしれません。

しかし、上記のキーワード、キーセンテンスの中で私が同意出来るものは、ほとんどありません。
ちなみに、私は以下のように考えています。

・Retire EarlyよりFinancial Independenceが重要
　＝＞　FIREを語るのであれば、どちらも重要。比較するものでもない。

・時間は有限だが、お金は無限に稼げる可能性がある
　＝＞　時間は有限。ただし、お金を無限に稼ぐことは困難。

・トリニティスタディ
　＝＞　過去のチャートの分析であり、将来を確定するものではない。

・人生で死ぬ間際に後悔すること
　＝＞　後悔しないために今の生活を見直しましょう。

・福利の力、若い頃から投資を始めたほうが有利
　＝＞　福利の力は長期投資に有効、しかし、若い頃はお金を使いたい年代

・出来るだけ早く投資して、出来るだけ早くリタイアをしよう
　＝＞　個人の価値観の問題であり、本人が結論を出すべきこと。人に勧めることでもない。

この同意できない点が多くあることが、一つの事例として参考程度に聞いたほうがいい、という感想につながります。

5年で125万ドルって可能か？
そもそも、本当に5年で125万ドル（約1億4千万円）築くことが可能なんだろうか？という疑問があります。

おそらく、サバティエ氏の場合はリーマンショックの底値のときに投資を始めて、収入の大部分を株式投資にしたことで達成出来たのでしょうと推測しています。
リーマンショックは人生の間に何度あるかわからないくらいの絶好の株の買い時でした。
アメリカの株価は、底値から、5年の間に3～4倍ほどに急上昇しています。
ちょうど、底値からの株価急上昇と投資を開始した時期が一致して、一気に蓄財が出来たのでしょう。

仮に、サバティエ氏と同じ収入の人が、今から真似をしても、5年で125万ドルの資産を築くことは、ほぼ不可能です。
何年かかるかは、今後の株価の上昇に大きく依存しますが、早くても10年～20年は要するのではないでしょうか。

つまり、株式投資は、タイミングが非常に重要で、上昇気流に乗れば、一気に資産を増加させることもある、そういう事例と捉えたほうがいいでしょう。