足るを知るとは?
「足るを知る者は富む」という言葉があります。
リタイア生活のブログにもよく登場する言葉でもあり、「“満足する”という意識を持つことで、精神的に豊かになる」と解釈されています。
ただ、この言葉が実感出来るのは、経済的にゆとりがある中高年だろう、と思います。
経済的にゆとりがあるので、過度の節約を強いられているわけでもなく、自分の判断でお金の使い道を決めることが出来ます。
また、それまでに多くの経験をすることで、何かをやり過ぎても満足度は上がらないということを実感として理解しています。
さらに、年齢的にも中高年にもなると新しいことへの興味や関心が低くなる傾向があります。
だから、多くの若い人には、響かない言葉なんだろうな、とも思います。
この言葉は、中国の思想家の老子に由来があるとされていますが、続きがあります。
「足るを知る者は富み、強(つと)めて行う者は志有り。」
努力する人には志しがある、つまり、努力や志しの大切さも説いています。
つまり、本来の意味は、貧乏に耐えろとか、現状を良しとしろ、という意味ではなく、足るを知りつつも志しをもって努力しろ、ということになります。
耳が痛い、と感じる中高年は多いと思のではないでしょうか。
さらにその前後にも言葉が並んでいます。
人を知る者は智、自ら知る者は明なり。
(他人を理解することは普通の智恵であるが、自分を理解することには並外れた智恵の働きが必要である。)
人に勝つ者は力あり、自ら勝つ者は強し。
(力のある者は他人に勝つが、本当の強者は自分に勝つ。)
足るを知る者は富み、強(つと)めて行う者は志有り。
(満足することを知っている者は精神的に豊かであり、それでいて努力する者にこそ志は宿っている。)
其の所を失わざる者は久し。死して而(しか)も亡びざる者は寿(いのちなが)し。
(自分の本来のあり方を見失わない者は長生きする。死んでもなお志を失わない者は真の長寿と言える。)
その中で、なぜ、「足るを知る者は富む」の言葉だけが広く普及したのかは、分かりませんが、前後の言葉も含めて、読んだほうが真意に近づく気がします。