アーリーリタイアと地位財(収入)
地位財の一つに収入があります。
周囲の人より、収入が多ければ、幸福度があがる、と言われています。
一方で、収入による幸福感は頭打ちになるというレポートもあります。
アメリカの学者が年収と幸福感の関連をまとめたレポートの記事を見たことがあります。その記事によると、年収が高いほど幸福感が高い傾向はあるが、年収が800万円から900万円で頭打ちになり、以降は年収が増えても幸福感は、ほぼ横ばいとありました。
日本でも内閣府が行った調査報告書があり、世帯年収3000万円から幸福度が減少していきます。内閣府のレポートへのリンクを張り付けておきます。
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/report01.pdf
主なポイントとしては、以下のことが挙げられています。
・女性の方が満足度は高い
・年齢別では「谷型」
(45 歳~59 歳が最も低く、60 歳以降で最も高くなる)
・世帯年収・資産別では「山型」
(年収は 2000 万円~3000 万円で、資産は 1 億円~3 億円で頭打ち。)
・健康状態がよいほど満足度が高い
・頼りになる人の数やボランティア活動の頻度等が増加するほど満足度が高い
・趣味や生きがいの有無で満足度の差が大きい
収入以外にも満足度との相関が調査されており、興味深い点もありますが、今回は、収入に絞った話を進めます。
私の個人的な体験も含めてお話をします。
新入社員の頃は、収入が低く、そこから、知識・経験を積み、成果が評価され、昇給・昇格するに従って、収入が上昇していきます。若い頃は、高収入を獲得することが目標の一つでしたが、ある時点からより高収入になることへの意欲が薄まっていくことがあります。
高収入になることへの意欲が仕事に対する熱意にもつながります。逆に、高収入への意欲が薄まれば、仕事への熱意も低下していきます。手を抜いている訳ではなく、やるべきことはやっており、周囲から批判されるようなことは何もないが、熱意が低下していくともに大きな達成感・満足感を感じることもなくなり、目標と呼べるものもなく、純粋に生活の糧として、仕事を続けている。
そういう状態が続き、ある時点でリタイア資金が確保出来たら、そのタイミングでリタイアする、という人が今後、増えていくように思います。
一方で、仕事への熱量が大きい人は、リタイア資金が確保出来ても、仕事を続けるのでしょう。
現役時代の収入はリタイア資金の確保において、非常に重要な要素です。
しかし、収入そのものはリタイア資金との相関はあれどもアーリーリタイアの選択とは大きな相関が無いように感じます。
実際に高収入で十分な資産を保有しているのに働き続ける高齢の経営者・高齢の企業幹部はたくさんいます。獲得した社会的な地位を維持したいために、かなり高齢でも働き続ける人もいます。
高収入への意欲の有無こそがアーリーリタイアとの相関が高いように感じます。
高収入への意欲の低下が仕事への熱量の低下となり、アーリーリタイアの一つの要因になります。私もこのパターンです。社会的な地位への固執もありませんでした。
贅沢しなければ、リタイアしても十分生活出来るのに、さらに稼いでどうする、という問いに対して明確な答えが見つからないのであれば、金銭だけを目的として賃金労働する意味が無いということになります。
金銭だけが目的ではない、と信念をもって答える人は、収入の多寡にかかわらず、アーリーリタイアすることもないのでしょう。
私も若い頃であれば、金銭だけが目的ではない、知識・経験を積み、スキルを向上させて、社会にも貢献していく、と言ったかもしれません。しかし、今は、そういう野心、情熱が枯れた状態です。
さらに稼いでどうする、という問いに対して明確な答えが見つからない状態です。